羽二重とはどんな生地?産地や種類について詳しく解説

滑らかな質感と光沢を持つ羽二重は、今では着物のみならず洋装の生地として、小物の生地として、色々な場面で愛用されています。ところで、皆さまは「羽二重(はぶたえ)」についてどれぐらい知っていますでしょうか。絹織物の一種としてしか認識していないという方、羽二重の種類まで把握しているという方、さまざまいらっしゃることでしょう。

今回は、羽二重という生地について解説します。羽二重の基本的な情報はもちろん、有名産地、種類、製造工程に至るまで解説していくので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

目次
  1. 羽二重の基本情報
  2. 羽二重は絹織物の一つ
  3. 羽二重と他の絹織物の違い
  4. 羽二重の特徴
  5. 羽二重ができるまで
  6. 羽二重の種類
  7. 羽二重の有名産地
  8. 福井県の羽二重
  9. なぜ福井県で羽二重が発展したのか?
  10. 羽二重の歴史
  11. 福井県独自の技術「ぬれよこ」
  12. 羽二重は何に利用されている?
  13. 和服の生地
  14. 洋服生地
  15. 輸出用生地
  16. つまみ細工生地
  17. 羽二重のメンテナンス方法
  18. まとめ

羽二重の基本情報

ここでは、羽二重とはどんなものなのか、特徴や製造工程について解説しています。

羽二重は絹織物の一つ

羽二重(はぶたえ)は、日本を代表する伝統的な絹織物の一つです。平絹(へいけん)とも言い、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)どちらにも撚らない生糸を用いて作られます。

「羽二重」という名称の由来には諸説ありますが、一般的には一つの筬羽(おさは)に経糸を二本、すなわち二重に通すことからこの名称になったと言われています。

ちなみに、「筬(おさ)」とは、経糸が横にずれないために押さえておくための織機の部品のことであり、「羽(は)」とは、筬の糸が通る隙間のことを言います。

元々は平織で織られていた羽二重ですが、後には綾羽二重、繻子羽二重などの組織が変化したものが作られるようになりました。また、蚕が作った繭を煮て紡ぎ出した生糸を原糸として用いるのが基本ではあるのですが、この他にも人絹糸、ガス焼綿糸、レーヨンやポリエステル、キュプラといった化学繊維など、絹と比較的似通った風合いを持つ糸が生糸の代わりに用いられることも増えました。絹100%ではない羽二重は価格も安くなるため、洋服用の生地などで重宝されています。

このように、「羽二重=シルク」というわけでは必ずしも限らないため、羽二重の生地を購入する際には、念のために素材のチェックをすることをおすすめします。絹100%なのか否か、自分の求めている羽二重生地なのかどうか確認するようにすると安心です。

羽二重と他の絹織物の違い

同じ絹織物でも織り方の違いで区別されます。

代表的な絹織物の一つである縮緬は、経糸に無撚糸、緯糸に強撚糸を用いて織ります。経糸と緯糸にそれぞれ違った生糸を用いることで、縮緬独特のシボが生まれるのです。

逆にツルツルの生地が気持ち良い綸子は、経糸と緯糸どちらも無撚糸を用いて、滑らかさを出します。
羽二重も経糸と緯糸に無撚糸を用いますが、経糸を二本使用していることで綸子とは違った光沢や滑らかさが生まれているのです。

他にも絹織物には絽や紗もあります。絽はもじり織と呼ばれる独特の織り方(経糸二本をねじり緯糸に織り込む方法)で織るので、透け感の出る生地に仕上がります。
紗は、二本の経糸に一本の緯糸を用いて織るので、糸の密度が低くなり、夏の薄物に相応しい透け感が出るのです。

また、同じ絹織物でもテイストが異なるのが紬です。紬は紬糸と呼ばれる生糸よりもランクが下になる絹の糸を用いて織るもので、コシやハリがよく出るのを特徴としています。

ちなみに、「正絹(しょうけん)」というのは絹を100%使用して作った素材という意味です。絹織物の中でも異素材が混ざらない絹だけで作られたものを指し、同じ絹織物の羽二重の中でも特に正絹素材の羽二重と言いたい時には「正絹羽二重」などと言うこともあります。

羽二重の特徴

羽二重の特徴は、滑らかな触感、軽さ、しなやかさ、独特の絹の光沢、丈夫さにあります。

経糸と緯糸双方に撚りの無い生糸を使いますが、筬(おさ)の一羽(ひとは)に経糸を二本通すというのが正絹とは異なる特徴で、二本通すことでできあがる生地は糸の密度が高いながら薄くてしなやかなものになるのです。ちなみに、経糸に用いる生糸は緯糸に用いるものよりも細い糸になります。撚りが無い糸を用いることで、より滑らかな質感になり、さらに水で濡らした緯糸を打ち込むことで糸の密度が高まり、スムーズなつるつるの触感へと変化していくのです。

平織の絹織物に比べてもより薄く作ることができることもあり、羽二重は着物の裏地や日舞の時に用いられる羽二重鬘のベース、高級インナーにも用いられているのです。

羽二重ができるまで

羽二重は、まず経糸の生糸を二本、緯糸に生糸を一本用いて、平織りで織られます。織られた生地は、精錬と言って、不純物を取り除く工程に回されます。そして、不純物を取り除いた生地は漂白されます。こうした工程を経て、白く美しい羽二重ができあがるのです。

羽二重の種類

先にも少し触れたように、羽二重は平織りのもののみならず、綾羽二重や繻子羽二重のようなものも織られています。ここでは代表的な羽二重の種類についてまとめています。

①    平羽二重(ひらはぶたえ)もしくは正絹羽二重
我々が一般的に認識している「羽二重」のことです。

②    片羽二重(たかはぶたえ)
経糸が生糸二本ではなく一本で織る羽二重です。この生地は平羽二重に比べてさらに薄いです。

③    諸羽二重(もろはぶたえ)
経糸に生糸を二本引き揃えたものを用いた羽二重で、平羽二重よりも厚みがあるのが特徴です。

④    塩瀬羽二重(しおぜはぶたえ)
我々が普段「塩瀬」と呼んでいるものは、実は塩瀬羽二重のことなのです。緯糸に太めの糸を用いるため、生地に張りがあります。帯地や半衿などに用いられることが多いです。

⑤    御召羽二重(おめしはぶたえ)
お召しに似た風合いがあることからこの名称で呼ばれるようになったそうですが、厳密には羽二重ではありません。御召縮緬の一種で、羽二重のような絹光沢が見られることから「羽二重」の名が使われ始めたと言われています。経糸には強撚糸を用いますが、織あがった生地は滑らかな質感であり、男性の紋服などに使われます。

⑥    繻子(朱子)羽二重(しゅすはぶたえ)
繻子とはいわゆるサテンのことで、羽二重をサテン織の組織にしたものを言います。生絹繻子と言うこともあります。

⑦    綾羽二重(あやはぶたえ)
綾織された羽二重で、両面に綾(斜線模様)となって現れます。通常の羽二重よりもしなやかさがあり、ドレープなども作りやすいことから、高級ドレスや高級洋装の裏生地として、ストール生地として用いられます。

⑧    輸出用羽二重(広幅)
日本の羽二重は、日本用のものと輸出用のものとに大別できます。日本用のものは、幅1尺(約38cm)×長さ3丈(約11.4m)を基準としていますが、海外用は、幅20、23、27、36、45インチ(約50cmから112.5cm)と各種あり、長さも50から60ヤード(約45mから54m)とバリエーションに富んでいますが、総じて日本のものよりも広幅で大きく作られているのです。また、目方で比べてみると、日本のものの方が海外用のものに比べて重めになっています。

羽二重の有名産地

ここでは羽二重の産地として有名なところについてご紹介していきます。

①    福井県(勝山市、大野市、鯖江市など)
福井県は「羽二重王国」と言われるほど、羽二重の特産地として大変有名です。もともと養蚕や絹織物技術に優れていたのですが、羽二重技術の確立に貢献し、日本最大の長繊維(フィラメント繊維)の産地として発展してきた歴史があります。今では、羽二重の他、合成繊維の開発にも深く携わっています。

②    石川県(加賀市など)
福井県と同じ北陸地方に属する石川県は、湿潤な日本海気候を上手に利用しながら絹織物を生産しています。羽二重に関しては、福井県の生産量に次ぐ生産量を誇っているとも言われており、羽二重の中でもやや厚みのある中羽二重の製造生産を主に担っています。

③    福島県(川俣町など)
福島県の特に川俣町は絹織物の産地として古くからよく知られています。羽二重技術を取り入れてからは、用いる経糸の最細化に成功し、非常に薄く軽い羽二重を作ることで有名になりました。「フェアリー・フェザー」という技術を開発し、世界的にも注目を浴びています。

④    京都府(西陣や京丹後市など)
高級絹織物の産地である西陣でも羽二重は織られており、西陣特有の技術を活かしたきめ細かい織が生み出す密度の高さが特徴です。ハリとコシが強いことでも知られています。

⑤    群馬県(桐生市など)
江戸時代には京都の西陣と並ぶ絹織物産地として名を馳せた桐生市では、羽二重の研究がずっと行われていました。ここで、羽二重を織る技術や技法が開発され、その技術がより活かされる北陸地方の福井県へ羽二重の製造が移されました。現在でも着物の裏地用の羽二重などは一部桐生市でも製造されています。

⑥    新潟県(五泉市など)
五泉市は、明治時代に福島県の川俣市から羽二重製造技術を導入したことで羽二重の産地へと発展しました。中でも、塩瀬羽二重の製織が有名で、良質な水源を活用した技法はより光沢感のある羽二重を作り出しています。

福井県の羽二重

先に羽二重で有名な産地について紹介しましたが、ここではその中でも特に有名な福井県の羽二重について詳しくみていきましょう。

なぜ福井県で羽二重が発展したのか?

福井県は元々絹織物の産地として有名でした。その歴史は奈良時代まで遡ることができ、朝廷に絹織物を献上していたという記述も残されています。このように、絹織物の長い歴史を持つ福井県に羽二重技術が導入されたことで、羽二重生産は飛躍的に発展していくことになるわけですが、福井県が羽二重製造地に選ばれたのには、その気候も大きく関係していました。

1年を通じて昼夜乾湿差があまりない福井県の日本海気候は、乾燥を嫌う羽二重製造にもっとも相応しいと考えられたのです。実際、羽二重研究がなされていたのは群馬県の桐生市で、羽二重製織の技術や技法が確立してからは、その実践を福井県に場所を移して行われたのでした。明治中頃には最先端のバッタン織機を導入し、羽二重が量産できるようにし、明治28年頃にはなんと羽二重専門の工場が3000を超えるほど、福井県では羽二重製造が盛んになったのでした。

羽二重の歴史

明治時代初頭、欧米文化に追いつこうと必死だった日本は、ヨーロッパやアメリカに人を派遣し、文化や生活の研究を行っていました。その中で、由利公正という人物はシルクに目を付け、数種の絹織物をヨーロッパから持ち帰りました。そして、それらの絹織物を参考に、新しい日本独自の絹織物の研究が始まったのです。そうして生み出されたのが「羽二重」でした。

群馬県の桐生市で、15年あまりの歳月をかけながら羽二重製織の基礎技術を確立し、福井県で製織を開始しました。日本向けの羽二重はもちろん、輸出用の羽二重も人気が出て、福井県は羽二重製織の産地として名を馳せたのです。大正初め頃から中頃まで、福井県の絹織物(主に羽二重)の輸出量はなんと日本全国の6割を占め、一時は世界一の絹織物産地にまで発展したのでした。

福井県独自の技術「ぬれよこ」

福井県の羽二重には、福井県独自の「ぬれよこ」製法が用いられています。この「ぬれよこ」製法とは、緯糸を水に濡らして織る製法で、湿度が高い北陸地方だからこそ生まれた製法だと言われています。福井県産の上質な羽二重に見られる美しい光沢、そして薄手の生地にもかかわらずしっかりとした丈夫さが感じられる織の秘密には、「ぬれよこ」が大きく関係しているのです。

羽二重は何に利用されている?

ここまで羽二重について詳しく解説してきました。ここでは、羽二重が実際どんなところで用いられているのか、その用途について解説していきます。

和服の生地

羽二重生地は主に和服の裏地生地として用いられています。特に薄手のものは着物の裏地、羽織の裏地、胴裏地に活用され、少々厚みのある羽二重生地は男性の礼装、羽織などに使われます。また、男女問わず黒紋付の生地には羽二重が用いられ、礼装用普段用問わず、袷の着物の白い半衿には塩瀬羽二重を用いるのが一般的になっています。

洋服生地

和服同様、ドレスやスカートの裏地生地に用いられることも多いですが、最近ではシルク羽二重ブラウスなどに使用される機会が増えているようです。羽二重を用いることで光沢感が美しいブラウスに仕上がるため、カジュアル用というよりはフォーマルな席にぴったりな装いとして重宝されています。演奏会用のブラウスとしての評判も高く、高級な舞台衣装生地としても活用されることがあります。それ以外では、ストールやマスクの生地としても用いられ、シーツなどの寝具用品にも羽二重生地が使われることがあるのです。

輸出用生地

輸出用の羽二重生地は、先にも述べた通り、日本国内で売られる反物よりも幅・丈ともに長さがあります。色味は白色のまま輸出されることがほとんどで、各国で染色や加工が施された上でドレスやハンカチ、ストール、裏地生地などに使われています。

つまみ細工生地

つまみ細工の生地というと縮緬などが有名ですが、正絹の羽二重が用いられているものもあります。正絹の羽二重で作られたつまみ細工は、透明感があって滑らかで大変美しいと近年人気を博しています。白色の羽二重を独自に染色して用いることもできるので、美しいグラデーションが楽しめるというのも羽二重ならではと言われているのです。

シボのある縮緬生地を用いるよりも滑らかな質感の羽二重生地を用いることで、繊細な細工やより小さなつまみを作ることができるため、縮緬細工生地でできたつまみ細工よりも花の種類や動植物の種類は豊富に表現できると言われています。ただし、生地素材は縮緬の生地よりも高価なものになるので、羽二重生地を使ったつまみ細工も高価です。

羽二重のメンテナンス方法

羽二重も他の絹織物生地同様にメンテナンスをしましょう。着物であれば、着終わった後ホコリや汚れを優しくブラシで払い、陰干ししてしっかり乾燥させます。特別目立ったシミや汚れが無い場合は、しっかり畳んで、通気性の良い桐ダンスなどに収納します。年に2回ほど虫干しをして汚れのチェックと風通しを行うのがおすすめで、この作業をきちんとすることで着物が長持ちするようになります。

もし、羽二重生地部分にシミや汚れを発見した場合は、無理に自分で処理しようとせず、着物専門のクリーニングに染み抜きを頼むようにしましょう。自分で漂白してより羽二重の色が黄色く濁ってしまったとなっては大変もったいないので、目立つシミや汚れを見つけた場合は、できるだけ早く悉皆などに相談するようにしてください。

まとめ

羽二重生地について詳しく解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。

「絹の良さは、羽二重に始まり羽二重に終わる」という言葉があるように、羽二重は絹織物の中でも特に高級なものとして、日本の伝統的な絹織物の地位を確固たるものとしてきました。滑らかな肌触り、美しい絹光沢にあこがれ、羽二重が実は大好きであるという人も少なくないのではないでしょうか。

今回、改めて羽二重について、特徴はもちろん、歴史や産地についても詳しく見てきた中で、「初めて知った」という内容もあったことでしょう。今後、羽二重を実際に見る機会、実際に身に着ける機会があった時には、ぜひその生地の種類や織り方の綿密さにも注目してみてくださいね。

RELATED

関連記事

LATEST

最新記事