お茶席でよく見かける白い紙を「懐紙」と言いますが、懐紙の正しい使い方についてご存知でしょうか。お茶席で和菓子を頂く際に懐紙を用いますが、茶道を習っていなくても、大人のマナーとして懐紙の正しい使い方はやはり把握しておくに越したことはありません。ここでは、特に和菓子を頂く際の懐紙の正しい使い方について詳しく解説していきます。また、懐紙の幅広い用途についても解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
懐紙について知る
そもそも懐紙とはどんなものなのかをここで確認しておきましょう。
懐紙(かいし)とは
懐紙とは、「かいし」もしくは「ふところがみ」と読むもので、もっぱらお茶席で使われる茶道具の一つとして知られる「紙(和紙)」です。
茶席で使われる懐紙の多くは白色の無地ですが、色付きのもの、柄付きのものなど意外とバリエーションに富んでいます。
「懐紙」という名前の由来
「懐紙」という名称は、かつて着物の懐にこの紙を入れて携帯していたところから付けられました。今でいうところのタオルやハンカチ、ティッシュの代わりに、そしてメモ用紙として懐紙は用いられ、大変便利な道具として常に懐に忍ばせていたのでした。
懐紙の始まり
懐紙は、もともと和歌や俳句を書くための料紙として用いられていたそうです。平安時代、国風文化が栄えた中で、懐紙のような紙は広く用いられるようになり、発展しました。
現在も、かな書道用の料紙のサイズをみると「全懐紙」といったサイズ表記を目にすることがあります。そこからも、料紙と懐紙に関連性があることがよく分かるのではないでしょうか。
平安時代頃に作り出されて、用いられてきた懐紙は、初めは料紙のように和歌を書くための紙として使われていましたが、徐々にその用途は広がっていきました。こぼしてしまった汁物を拭く紙として、口元を拭う紙として、手を拭う紙として、さまざまな場面で使える便利な道具として人々の生活の中に定着していったのです。
しかし、明治時代以降、欧米の洋の文化が流入してきたことで、懐紙の立場が失われることになりました。より実用的な洋紙やお洒落なハンカチ、ティッシュなどが輸入され、懐紙はどんどん使われる機会を失いました。また、着物から洋服へと服装が変化していったことで、懐紙としての携帯場所も失ったことで、懐紙は一気に廃れていってしまったのです。
そのような中、着物でお稽古をする、いわゆる和稽古では引き続き懐紙が用いられました。特に、茶道において懐紙はお茶や和菓子を頂く上で重要な役割を果たす紙だったので、むしろ重宝され続けてきました。
こうした歴史的背景から、「懐紙はお茶席で使うもの」という印象が濃くなってしまっているのですが、実はお茶席以外でも日常的に使うことができる便利な道具なのだということは覚えておくと良いでしょう。
懐紙の種類やサイズ

懐紙にもさまざまな種類やサイズのものがあります。お茶席以外でも使えるようにと現代の生活でも活用されるよう懐紙の形や色、大きさは変化し続けているのです。
もっともスタンダードな懐紙
もっともスタンダードな懐紙で、皆さまが懐紙と言われて想像するものは、やはりお茶席で用いられる白色のものになるのではないでしょうか。
お茶席で使われる懐紙は白色の無地のものを基本としており、主に美濃和紙のものがよく用いられています。お茶席で使用する懐紙は、男女でサイズに違いがあります。男性のものは女性のものよりも一回り大きくなっており、女性ものが145mm×175mmで男性ものが175mm×206mmとなっています。
誤って大きなサイズの懐紙を購入してしまうと女性の懐紙入れの中に懐紙が入らないという事態にもなりかねませんので、購入する際はきちんとサイズを確認するようにすると良いでしょう。
ちなみに、お茶席において女性が男性ものの大きな懐紙を用いてはいけないということは特にありませんが、流派やお教室の方針によっても懐紙のサイズに規定が設けられていることもあるので、あらかじめ先生に確認しておくと安心です。
色付きの懐紙
お茶席では白色の懐紙以外を用いるのがNGとなることも少なくないため、茶道用に色付きの懐紙を購入するというのはあまりおすすめできません。しかし、日常遣いとして懐紙を常備するのであれば、色付きのものも素敵です。メモ用紙として、ハンカチやティッシュの代わりとして、色の付いた懐紙は華やかさが出ておすすめです。
柄付きの懐紙
季節の花やイベントをワンポイントとして描いてある懐紙もあります。お茶席でも季節のワンポイントが描かれた懐紙を使うこともたまにはあるかもしれませんが、使用頻度は低いでしょう。特に、季節柄が描かれたものは、ピンポイントの時期しか使えないため、もったいなさを感じることもあるかもしれません。
もし、お茶席用に季節柄が描かれた懐紙を購入したものの、出番がなくて困っているということであれば、ぜひ日常でもその懐紙を使ってみてください。一筆箋代わりに、お菓子のお皿代わりに季節柄の懐紙を使うことで、季節感を楽しむこともできますよ。
ミニサイズから大判サイズまで
懐紙のサイズは、茶道具としての懐紙のサイズ(男女別)が標準的なサイズと考えて良いでしょう。このサイズの懐紙は白色を始め、色物、柄物、エンボス加工されているものなどさまざまありますが、それよりも大きいサイズ(例えば205mm×205mm)や名刺程度のミニサイズまで幅広いサイズ展開もあるのです。使う用途に応じてサイズを変えてみるのも良いでしょう。
また、懐紙の形もさまざまあり、お花の形に切られているもの、透かし加工されているもの、正方形のものなどユニークな形のものも多いです。
懐紙の用途
懐紙は大変優れた紙なので、お茶席だけで用いるというのはもったいないです。では、どんな時に懐紙は使えるのかという話になりますが、懐紙は、例えば以下のような使い方ができます。
・コースターとして
・箸置きとして
・お菓子置きとして
・箸袋として
・ポチ袋として
・便箋として
・テーブル拭きとして
・ティッシュとして
・チリ紙代わりとして
・ハンカチ代わりとして
・ラッピング代わり(包装紙代わり)として
・メモ用紙として
・一筆箋(便箋)として
・アロマディフューザーとして
懐紙の用途一覧を見て、こんな使い方もあるのかと驚かれた方も多いでしょう。このように、懐紙は非常に利便性に優れた紙で、一つ持っておくとさまざまな場面で活躍してくれるので、大変おすすめなのです。
和菓子と懐紙
お茶席で和菓子を頂く際、自分の器に和菓子を一つ移すわけですが、この時懐紙を必ず用います。お茶を習ったことがなくても、お茶席に招かれる機会というものはあるので、ここで和菓子と懐紙のマナーについて今一度学んでおくと、安心でしょう。それでは、和菓子を頂くときの懐紙の使い方について解説していきます。
お茶席に招かれた時

お茶席に招かれ、自分の前に菓子器が回ってきた時のマナーは以下の通りです。
① 次に控えている方に会釈をし、「頂戴します」と言ってから菓子器を自分の正面に移動させる。
② 懐紙を束ごと取り出し、「わさ」と呼ばれる折山が自分の方に来るようにして、菓子器と自分の膝の間ぐらいに置く。この時、懐紙の角をずらす必要はない。
③ 菓子器に添えられている黒文字(菓子用の楊枝)を使って、懐紙の束の上に一つ和菓子を移す。この時、懐紙や菓子器は移動させない。
和菓子は、一列で並べられている場合は右から、二列以上で並べられている場合は下段の右から取るのが一般的。
④ 和菓子を懐紙に乗せたら、懐紙の上右端部分を一枚手前に折り返し、その部分で先ほど使った黒文字を拭う。折り返した懐紙で黒文字を挟むようにし、黒文字を手前に引くことで汚れを拭うことができる。できるだけ無駄な動きをしないのがポイント。
⑤ 清めた黒文字を元の通り菓子器に添え、次の人に菓子器を回す。
⑥ 和菓子を頂く際は、和菓子が乗っている懐紙を束ごと持って、懐紙を小皿代わりとする。そして、自前の菓子切りと呼ばれるステンレス製の楊枝を使って和菓子を切り分けながら頂く。
⑦ 食べ終わったら、和菓子が乗っていた懐紙(使用済み懐紙)を懐紙の束から外し、そこに菓子切りを乗せてから、懐紙の汚れている面が中になるよう折りたたむ。折りたたんだものはすぐに片付けるようにすると良い。
来客に和菓子を取り分けて出す場合
来客に和菓子を出す際、銘々皿の上に懐紙を一枚折った上に和菓子を乗せて出すのが見た目にも美しく、またお皿も傷つきにくく良いとされていますね。
自分が和菓子を頂く場合と、お客様に和菓子を出す場合とでは懐紙の使い方が異なるので気を付けたいところです。
お客様に和菓子を出す時には、懐紙の四隅を少しずらして折り、わさがお客様側に来るようにセッティングします。この時の懐紙の折り方ですが、慶弔で折り方が異なるので、シチュエーションに合わせて、正しい折り方ができるようにしておくのが望ましいです。
① 慶事用の折り方
わさを手前にして折った時に上にくる紙を右に少しずらせる。上になっている紙が右下がりとなっていれば慶事用の折り方になっていると判断できる。
② 弔事用の折り方
わさを手前にして折った時に上にくる紙を左に少しずらせる。上になっている紙が左下がりとなっていれば弔事用の折り方になっていると判断できる。
ちなみに、なぜ左上がり右下がりの折り方が慶事用の折り方なのかというと、諸説あるようですが、太陽が昇る左側が「吉」で縁起が良いからだそうです。
懐紙の持ち運び方
ここまで和菓子と懐紙について解説してきましたが、そもそも懐紙はどこにどのように入れて持ち運ぶのが正解なのか気になったという方もいるのではないでしょうか。ここでは着物の場合と洋服の場合に分けて解説していきます。
① 着物の時の懐紙の持ち運び方(お茶席の場合)
着物の懐に懐紙の束、その上に帛紗(ふくさ)を重ねて忍ばせる。この時、懐紙の束も帛紗もわさが下になるようにする。さらに、帛紗は端が閉じていない方が外側になるように懐に忍ばせる。つまり、着物の下に帛紗、その下に懐紙の束、その下に長襦袢という風に重なっていることになる。
お茶席で懐紙が必要になった時は、懐から束ごと出して使う。また、懐紙の束には自分の菓子切りを挟んでおく。懐紙と菓子切りを一緒にしておくことで、スムーズに和菓子を頂くことができる。
ちなみに、和菓子などを頂いた後の使用済みの懐紙は、右袖の袂の中に入れて片付ける。懐紙をきちんと折っていないと、中身が着物の中でこぼれることになってしまうので、要注意。
② 洋服の時の懐紙の持ち運び方(お茶席の場合)
洋服には着物のような懐がないので、帛紗ばさみと呼ばれるケース(ポーチ)に茶扇子、菓子切り、帛紗と共に懐紙の束も入れて持ち運ぶ。帛紗ばさみに懐紙の束を入れる際、わさが下になるように入れる。
和菓子などを頂いた後の使用済みの懐紙も帛紗ばさみの中に入れて片付けるようにする。
まとめ
和菓子と懐紙について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
和菓子が出された時の懐紙の使い方、和菓子をお客様に出す時の懐紙の使い方で違いがありました。特に注意すべきだったのが、和菓子をお客様に出す時の懐紙の折り方です。折り方によっては弔事用となるので、きちんと正しい折り方を覚えておくようにしたいところですね。
また、和菓子を乗せるという用途以外にも、懐紙にはさまざまな使われ方があるということもよく分かったのではないでしょうか。ハンカチやティッシュ、ちり紙としても使え、さらにメモ用紙や一筆箋としても使え、包装紙としても使えるというのは、大変利便性に優れた紙だと言えます。
和装の時に限らず、ぜひ洋装の時でも鞄の中に自分好みの素敵な懐紙を入れて、機会があったら大いに活用するのが大変おすすめです。
懐紙は茶道具を取り扱っているお店のみならず、文房具店でも購入することができます。最近では、通販でも簡単に手に入れることができるので、気になる方はぜひ一度検索してみてくださいね。

