着物のサイズ表記は独特でイマイチ分からないという言葉をよく耳にします。着物のサイズを表記するのにあたり、そもそもcmで書かれておらず、馴染みの薄い寸や尺で書かれている時点で、もうよく分からないという方は多いことでしょう。さらに、着物では「着丈」や「身丈」という言葉も頻繁に使われますが、どういった違いがあるのか言葉だけではよく判断がつかないということもあるでしょう。
そこで今回は、着物のサイズについて詳しく解説していきます。「身丈」や「着丈」の違い、サイズの測り方、自分にとっての適正サイズなどについても触れていくので、ぜひ参考にしてみて下さい。
和装のサイズ表記を確認
和装のサイズ表記は洋装のものとも異なり、少々独特です。単位も慣れ親しんだcmやmではなく、尺や寸などの尺貫法が用いられることが多く、また基準となる「身丈」という言葉も特徴的なのです。
サイズ表記に用いられる単位とは?(尺・寸・分)

呉服店で採寸してもらった際、尺や寸でサイズが表記されますが、着物の世界では尺や寸といった単位がある尺貫法が基本となっていることをまずは知っておきましょう。ところで、尺って具体的に何cmぐらいなのか気になりますよね。尺、寸、分の長さをcmで表すと次の通りになります。
・尺:尺にも様々ありますが、和裁に関する尺は基本的に鯨尺が用いられています。ただし、東北の方では曲尺が用いられることがあります。そして、1尺=約37.8cmです。
逆にcmの寸法を鯨尺にする場合は、cmの寸法に2.64を掛けることで求められます。例えば、150cmの鯨尺を知りたいのであれば、150×2.64=396となるので、3尺9寸6分であることが分かります。
・寸:寸は1尺の1/10の大きさです。すなわち、1寸=約3.78cmになります。
・分:分は1寸の1/10であり1尺の1/100です。つまり、1分=約0.378cmになります。
着丈と身丈
着物のサイズ表記には、「身丈」と「着丈」、「裄丈」、「身巾」、「袖丈」といった項目があります。ほとんどの場合は「身丈」でサイズが表記されていますが、まれに「着丈」で表記があることがあるので気を付けたいところです。
先に挙げた項目の中で、「裄丈」は肩幅と袖幅を足したもの(首の中心から手首のぐりぐりまで)の長さ、「身巾」は腰回りの長さであることが分かりますが、「身丈」という言葉は曖昧で良く分からないという方も多いのではないでしょうか。まして、「着丈」という言葉もあるので、わざわざその二つを別に使う必要があるのかと悩まれた方も多いかもしれません。これは、和服ならではのサイズ表現だと知っておいてください。着物は、洋服のように長さぴったりに着るものではなく、自分で着る長さ(着丈)を調整してまとうものなのです。だから、「着丈」と「身丈」に違いが生じ、それぞれ表記が必要になったというわけなのです。

ちなみに、身丈は仕立て上がりの着物の長さで、ほぼ身長と同じです。対する着丈は着物を装った時の着物の長さになるので、着る時々で多少の差(誤差程度)が出ます。
「着丈と身丈」2つの表現があるのはなぜ?
先にも触れたように、着物は着丈を調整することでまとうものなので、身丈と着丈に違いが生じます。そしてこの違いに大きくかかわってくるのが「おはしょり」という存在なのです。
「着丈」と「身丈」の定義
まず、ここで簡単に「着丈」と「身丈」の定義について確認しておきましょう。
・着丈とは、着物を着た時の長さのこと
・身丈とは、着物の総丈のこと
そして身丈と着丈の差分はおはしょり分に該当すると言われているのです。これが、もし身丈と着丈が同じ丈寸法の着物の場合は、「対丈」と呼び、おはしょりを作らずに装うものになります。男性の着物などが対丈のものに該当します。
おはしょりの存在

女性の着物を着る時に、身丈より長い部分を腰のところでたくし上げ、腰紐で縛って調整して着るのですが、このたくし上げた部分をおはしょり(お端折)と呼んでいます。たくし上げた余分を美しく整える際に、端を折るような所作があり、そこからおはしょりと呼ばれるようになったと言われています。
ちなみに、おはしょりは初めから存在していたわけではありません。江戸時代初期には、女性は小袖を対丈(着丈と身丈が同じ着物)で着物を着ていたのです。それが徐々に長い着物がトレンドとなって裾を引く姿が女性らしくて素敵だと人気になったのです。ただし、裾を引くのは屋内だけであり、屋外では裾が長すぎるのは不便ということもあって、腰でたくし上げるなどの工夫がなされていました。これが現在のおはしょりの原型だと考えられています。
そして、明治時代中期になると、屋内でも裾を引きずらないのが好ましいとされ、現在のおはしょり姿になったとされています。より女性の生活が活動的になったことで、長い裾は邪魔になったのだと考えられます。しかし、おはしょりは女性の着物姿や着物のラインが美しくなる効果、足さばきが良く歩きやすくなる効果があり、さらに着物の着丈の調整が自分でできる便利さがあるということから失われなかったようです。もし、おはしょりがただのファッションに過ぎなかったのであれば、男性のような対丈着物が主流になっていたかもしれません。
着物のサイズで重視するのは「身丈」
ここまで「身丈」や「着丈」の話をざっくりとしてきましたが、結局「身丈」と「着丈」とは何なのかということについて今一度まとめておきましょう。
・「身丈」とは着物の衿付け根から裾までの背縫いの長さで測れるものであり、ほぼ身長と同じ長さで考えられます。
・「着丈」とは着物を着ている時の着物の衿付け根から裾までの背縫いの長さ(衿付け根から裾までの長さ)で測れるものであり、着ていると着物の総丈(衿部分をのぞく)と考えると分かりやすいです。
そして、身丈と着丈の違いはおはしょり分となるので、
「身丈」-「着丈」=おはしょり という式が成り立つのです。
さて、ここで重要になってくるのは、「身丈」と「着丈」のどちらを重視して着物のサイズ選びや採寸をすれば良いのかということになりますが、その答えは「身丈」です。
ちなみに、和装や和裁の世界で考えられる「身丈」とは身長の長さそのものになることが一般的なので、基準にするにもとても分かりやすいのではないでしょうか。
自分にピッタリのサイズの着物とは?
着物のサイズ項目には、「身丈」、「身巾」、「裄丈」、「袖丈」などがあるという話を先にもしましたが、実は「身丈」と「裄丈」さえ分かっていれば自分に見合ったサイズの着物を選ぶことができるのです。逆に言えば、「身丈」と「裄丈」だけは正しいサイズ感や測り方を知っておいた方が良いのです。
適切なサイズの身丈
「身丈」=「身長」と考えれば良いと述べてきましたが、身丈サイズの基準は自分の身長であるということはしっかり覚えておくと良いでしょう。
ただし、着物はおはしょりを作る過程で多少着丈の調整が可能なので、絶対に身長サイズでなければならないということはありません。一般に、身長±5cmの身丈が適正サイズになるとされています。
特に、自分で着付けて着物を着るという方は、できるだけピッタリサイズの身長±5cmにするのがおすすめですが、着物を着慣れているという方や着付け師に着付けはお願いするという方は、身長+10cmまでの着物を着ることができるというのは覚えておくと良いかもしれません。
身長-10cmの着物というのは、着ることができないわけではありませんが、かなり厳しい調整になります。もし、「身長-10cmの身丈の着物だけれども、どうしても着たい着物がある」ということであれば、何度も着付け練習をして、おはしょりが無理なく決まる位置というのを研究してみるのがおすすめです。

高身長の方は身長±5cm範囲で着物を探してもなかなか良い着物に出会えない場合がありますが、身長-7cmから身長+10cmまで大丈夫と思って着物を探してみると、ぐっと選択肢も広がることでしょう。
ただし、きちんとおはしょり処理ができる長さというのは、短い場合で、身長-5cm程度が一つの目安になります。着付け初心者の方は特に、着物の大きさをサイズギリギリにするのではなく、少しゆとりのあるサイズで考えていた方が安心と言えるでしょう。
参考までに
・身長151cmで身丈4尺0寸0分
・身長161cmで身丈4尺2寸5分
身丈が短いとどうなる?
ところで、身丈が短いとどんな問題が生じるのだろうかと気にされた方もいるのではないでしょうか。身丈が短いということは、おはしょりに使える布の分量が少なくなることを意味しています。つまり、おはしょりがほとんど作れない状態で着物を着ることになるのです。おはしょりは、帯の下線から人差し指1本分の長さが出るのが望ましいとされているので、極端に短いおはしょりは不格好になってしまい、全体のバランスも悪くなってしまうので、できる限り避けた方が無難だと言えます。
ちなみに、身長±5cmの身丈の着物であれば、おはしょりをきちんと作ることはできるのです。
身丈が長いとどうなる?
逆に身丈が長い場合はどんな問題が生じるのでしょうか。身丈が長いということはおはしょりもたっぷり作れるので良いのではないかと思われるかもしれません。しかし、おはしょりは長すぎても着物全体のバランスが悪くなってしまうので、おはしょりの出し過ぎにも注意しないといけないのです。
ただし、おはしょりが長い分には、内側に折り上げて伊達締めで抑えることで調整ができるようになります。身丈が長いというのは、身丈が短いことよりも問題ではありませんが、適切におはしょりを処理するには難易度の高い技術が必要になるので、着物初心者の方は難しく感じてしまう部分もあるかもしれません。そんな時には、着付け師などプロの手を借りて、美しく整えてもらうのがおすすめです。
身丈と着丈の測り方
身丈の重要性が分かったところで、ここでは身丈、着丈の実際の測り方、採寸方法について解説していきます。
自分の身体で採寸する場合
採寸方法についてですが、「身丈」=「身長」という話を先ほどからもしていることから分かるように、身丈は身長でサイズを測れば良いです。
そして着丈寸法は、背(首)のぐりぐり骨部分から着物を着用した時に決める裾の位置(だいたいくるぶしの下あたり)までを一直線に測って求めます。着丈に関しては自分でちゃんと測るのは難しいので、誰かに手伝ってもらうのがおすすめです。
着物の長さを測って測定する場合
自分が持っている着物で着丈や身丈を測る場合もあります。
まず身丈ですが、着物の出来上がり寸法を身丈としているところは多いです。ちなみに、着物を平置きにした状態で身丈を測る場合は、「肩身丈」と「背身丈」という二つの採寸方法が存在します。背身丈は背縫いの、上は衿付け線から、裾は裾線までを測った寸法になり、肩身丈は肩山から裾線までを測った寸法になります。双方の違いは(衿の)繰り越し分であり、
肩身丈-背身丈=繰り越し+付け込み(縫い代)
と表すことができるのです。
着物の身丈寸法が肩身丈寸法を採用しているか、背身丈寸法を採用しているかは、そのお店や地域、時代によっても異なることが分かっています。お店によっては「身丈は背身丈寸法を採用」など丁寧な注釈が入っているので、見落とさないようにしておくと良いでしょう。
着物をレンタルする際のサイズ合わせとは
着物をレンタルする際にどのサイズが自分に合うのか気になるところでしょう。
まずサイズについて考える際に基準にしたいのは、身丈です。つまり、自分の身長で着物のサイズを絞るということになります。例えば、150cm前後がSサイズ、155cm前後がMサイズなどと表現されています。
また、身巾(身幅)と表記せずヒップ表記になっているところも多いようで、同じ身丈サイズでもヒップで身巾が異なるサイズが存在するなど、意外と細かくサイズも分かれているので、自分の体型によりフィットするサイズ感の着物を選ぶことも難しくないのです。
最近では、尺貫法が分かりにくいということもあり、cm表記にしているお店も増えたので、サイズ感も以前より分かりやすくなっています。

身丈の修正は可能?
きちんと、美しく着物を装う上でも自分のサイズに合った着物を着たいですよね。しかし、人から譲り受けたものなどは身丈が合わないものも多いのではないでしょうか。そんな着物をできるだけ自分のぴったりサイズに合わせるべく、着物の修正ができるのかどうなのか、その方法について、ここではみていきましょう。
丈を詰めて短くする
身丈が長い着物は、丈詰めをすることで調整することができるのです。再び長い丈に戻せるよう、裁断せず、内側に折り上げることで長さ調整するのが和服の基本で、丈詰めの場合は胸下あたりの帯下に隠れる部分で内揚げをすることで丈を短くできます。この「内揚げ」とは帯の下に隠れる部分で余分な丈を折り込み、縫い込んであるある箇所のことを言い、「内揚げする」とはすなわち丈詰めするという意味になるのです。
しかし、柄行の関係などで、どうしても裾を裁断して丈を短くするという場合もあります。一度裁断してしまった布は元には戻せないので、この方法を採用した場合、再び丈を長くすることは不可能なのだということはしっかり理解しておきましょう。
丈出しをして長くする
身丈が短い着物は、「内揚げ」を解いて、丈出しをすることができます。ただし、これは着物に「内揚げ」がある場合に限ります。自分で「内揚げ」部分の縫い目を解いて丈出しすることもできますが、元々の仕立てジワであるスジがはっきり残ってしまうという問題が出てきます。着物に負担を掛けないためにも、できるだけプロにお任せして丈出ししてもらうのがおすすめです。
ちなみに、「内揚げ」がない場合でも丈出しできるケースがあります。おはしょりや帯で隠れる部分に別の布(同じ色味の生地)を継ぎ足して、身丈を長くするという方法です。カジュアル着などではこの方法を用いた丈出しが行われることもよくありますが、格が高い着物になればなるほど、別の布を用いた継布をするケースは少なくなります。もし同じ色味の生地があるのであれば、継布で丈を長くするというのも良いのではないでしょうか。
身丈の修正ができない場合は着付け方を工夫して装ってみる
丈出し、丈詰めができない場合でも、どうしてもこの着物を着たいということがあるでしょう。そんな時は、着付け方を工夫して装ってみましょう。
身丈が短めの着物を着付ける
着物は、おはしょりが長すぎず、短すぎず作ることができれば、きちんと着ることができます。そして、おはしょりの出し加減は腰紐の位置によって調整がある程度できるようになっているのです。
まず、身丈が短めの着物を装う場合、おはしょりがきちんと出るかどうかが着物を着られるか否かの見極めポイントになってきます。腰紐を通常通りおへその位置で締めてしまうとおはしょりが出ず、困ってしまうかもしれませんが、この問題は腰紐を下にすることで解決できます。
腰紐は腰骨の一番出っ張っている位置まで下げることができるので、おはしょりがほとんど出ないかもしれないという時には、一度腰骨の一番出っ張っている部分に腰紐をあてがって、締めてみてください。思った以上におはしょりが出ることでしょう。この時、おはしょりがちゃんと出て、腰紐がしっかり隠れていれば問題ありません。しかし腰紐が見えてしまう場合は、もう少し高い位置で締めなくてはいけなくなるので、調整しながら様子を見るようにするのが良いでしょう。
身丈が長い着物を着付ける
身丈が短い着物のおはしょりを出すためには、腰紐を下げることで調整することができるという話をしましたが、逆に身丈が長く、おはしょりが多く出る着物の場合は、腰紐の位置をいつもよりも高めにもっていくことで、調整できるようになるのです。ただし、あまり上にし過ぎてしまうとお腹が腰ひもで苦しくなってしまうこともあるので、おへそよりも2、3cm上の位置にするなど、ほどほどの高さで調整するのが望ましいと言えます。
また、着付けに慣れているという方は、おはしょりの裏始末をする際に二段構えで折り上げたり、伊達締めで余分を押さえたりといった方法を用いることで、長すぎるおはしょりの始末が可能なので試してみて下さい。その場合は、腰紐は通常の位置に締め、おはしょりの長さを裏側で調整するようにすると、綺麗に整えることができます。
まとめ
着物の身丈について、着丈との違い、測り方など詳しく解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
着物の身丈というのは、和装独自のサイズ表現であり、「身丈=身長」であるというのが今回のポイントでした。
着るもののサイズというとどうしても洋服のサイズ感覚になってしまうのですが、和服には和服のサイズ表現があるということだけは忘れずに覚えておくと安心ですね。
着物の身丈は内揚げなどで調整可能という話もしましたが、もし着物を誂える際に、将来娘や孫にも残したいということであれば、少し身丈に余裕を持たせて誂えておくのがおすすめです。一度裁断してしまった着物を元に戻すことはできませんが、裁断せずとも着物の身丈の調整は十分できるので、より長く、大切に一つの着物をお召しになるにも、ぜひご検討下さい。
