綿が入って暖かい褞袍(どてら)は冬の防寒着として重宝されてきました。しかし、近年は温暖化の影響もあり、褞袍の活躍場が縮小されてきた印象があります。若い方の中には、「そもそも褞袍とは何?」と、褞袍そのものをよく知らないという方もいるようです。最近話題の着る毛布よりも暖かく、冬の寒い時期に活躍してくれる褞袍について、褞袍とはそもそも何か、他の羽織ものと何が違うのか、詳しくみていきましょう。
褞袍(どてら)について
褞袍(どてら)とはどんな形状の防寒着なのか、褞袍の特徴などについて解説していきます。
褞袍は冬の防寒着
褞袍は防寒用の丈の長い和服で、部屋着として専ら用いられます。綿が入った、広袖のくつろぎ着で、衣服(主として長着)の上に重ねて着るのが一般的です。普通、帯はしめずに紐あるいは伊達巻きでとめて装います。
現在は普段着としてはあまり用いられなくなりましたが、寒さの厳しい地域では今でも利用が多いようです。旅館にも冬用の部屋着羽織として褞袍を置いているところもあります。
褞袍の素材と形状
褞袍の素材は、表地に銘仙や八端(はったん)などの縞柄、裏地は金巾などの紺の木綿を用いるのが一般的ですが、最近はウール地を用いることもあります。また、衿に黒繻子、綿黒ビロードの掛け衿をするのも褞袍の特徴と言えます。
褞袍は、一般に袖は広袖につくり、袖付き部分は男女で異なる仕様になっています。男物は、羽織のように全部を縫い付けた袖に、女物は振りを縫い合わせた人形に仕立てます。
袖口は、掛け衿部分と同じ黒ビロード(もしくは黒八丈)を用い、暖かさを増しています。入れ綿は、丹前綿を用いました。綿入後の綴りは、内で綴ることが多いのですが、綿を厚く入れた場合は夜着のように外側から綴って、飾綴仕立てとします。
褞袍の由来と歴史
褞袍は「丹前」と呼ばれることもあります。ここでは、褞袍の呼称や由来、歴史についてみていきます。
ドテラと丹前
元々「どてら」と呼ばれていたのですが、江戸時代初期に入ると、丹前風呂(丹後殿の前の風呂)に通う男伊達たち(侠客)の間に流行した広袖の羽織(どてら)は、「丹前風呂」にちなんで、「丹前」と呼ばれるようになったと言います。ちなみに、丹前風呂に通う男性陣が着ていた褞袍はかなり派手なものだったそうです。そこから、主に関西地方では「どてら」のことを「丹前」と呼ぶようになりました。
これに対し、関東地方(江戸)では、褞袍は「どてら」と呼ばれていました。
このように、地域によって呼び名は変わりましたが、いずれも褞袍のことを意味しているのです。
江戸から現在へ
褞袍は、江戸時代に「丹前」という新しい呼称を付けられ、ちょっとしたブームになりました。明治、大正時代に入ると褞袍は長着の上に重ねて着る防寒着としての和服という使われ方が定着します。
現在は普段着として用いられることはあまりなくなりました。旅館では来客用の羽織として置いているところが多いですが、布地も化学繊維やウールの単衣丹前のものになるなど、本来の褞袍とはまた違った形になりつつあるようです。
褞袍とは夜着から生まれた羽織?
褞袍は元々夜着を一般着化したものだと言われています。夜着とは、袖や衿を付け、綿を厚く入れて仕立てた寝具のことです。肩がすっぽりつつまれるので暖かいのですが、さらにその上に掛け布団を重ねて用い、冬場の寒さをやり過ごしていたと言われています。
夜着は衿や袖が付いているとはいえ、実際に着て生活するには不便であってことから、普段の羽織着として用いることができるよう夜着をコンパクト化してできたのが褞袍の始まりだったとされています。
ちなみに、夜着の綿を薄くしたものを掻い巻きないしは小夜着と言います。夜着ほど綿が厚くないことから軽く、また身丈も夜着より短いことから褞袍や丹前に近いものとされています。ただし、掻い巻き(小夜着)は着ることよりも「掻き纏うて寝る」という用途(寝具としての意)の方が強いものであるため、褞袍とは区別されています。
褞袍は冬羽織の一種
褞袍は長着の上に重ねて着るものとして長く認識されてきたこともあり、同じ着物の上に羽織着る「羽織」と広義では、同じ種類のものと関連付けられることがあります。特に、冬場に着られるものであることから、褞袍は冬羽織の一つであるとされることが多いです。冬羽織と一言で言っても、袷羽織、綿入羽織、茶羽織、半纏など細かく分類することができ、褞袍はこのうち綿入羽織に位置付けることができます。
ドテラと半纏(はんてん)とちゃんちゃんこの相違
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褞袍と似た羽織物に半纏(はんてん)、ちゃんちゃんこがあります。それぞれどのような特徴があり、褞袍とはどういった違いがあるのか比較してみましょう。
半纏とは?
半纏(はんてん)は、衣服の上に着る半身衣で、広袖のものを言います。家で用いる略服と、男子の仕事着として用いるものがあります。前者は、江戸時代以後、庶民の男女が羽織代わりに家で普段着の上に羽織って着たもので、紬、縞物などで作り、黒の掛け衿を付けるなどしていました。
衿は羽織のように折返らず、紐も普通は付いていません。これの一種に子供を背負う時に用いる「ねんねこはんてん」、丸形で綿の多く入った「亀の子はんてん」などがあります。他にも、紋を付けた印はんてんもあります。
仕事着としてのはんてんは、例えば漁師が用いるはんてんは「大漁はんてん」と言って、丈も長く、これに宝船や鶴亀などの吉祥文様を美しく染め出したものがあります。その他にも、火消の用いる「刺子はんてん」、陸尺の着る「陸尺はんてん」など、それぞれに職業的な特徴を持った様々な羽織があるのです。
ちなみに、はんてん生産が有名なところは久留米です。日本伝統工芸品の一つである久留米絣を用いたはんてんは「久留米はんてん」と呼ばれ、地元の人はもちろん、日本国内のみならず外国の方からも人気が高いです。
ちゃんちゃんことは?
ちゃんちゃんこは、袖無し羽織を愛称的に言ったもので、地域によって「でんち」、「てんこ」、「てんちこ」などと呼ぶところもあります。主に老人や幼児が用いる上着で、綿入れ仕様であることから防寒用として重宝されてきました。特に農山漁村などでは青年男女も洋服の上に羽織って用いることがあります。
それぞれの違い
褞袍は夜着が元になってできた冬羽織であったのに対し、はんてんは羽織代わりに庶民に用いられるようになった冬羽織であることが分かりました。はんてんの多くは綿入れにはなっていませんが、冬用の羽織には綿が入っているものもあり、これが褞袍となかなか見分けにくいというのがあるようです。
本来の褞袍は丈が長く、着物よりも着丈が長いぐらいのものを言うのに対し、綿入り半纏は半身だけの長さになるので、丈の定義が異なります。しかし、綿入りはんてんと褞袍では、ものによっては丈だけしか違いが無いということもあるので、褞袍の短い版が綿入りはんてんと考えても良いかもしれません。
また、ちゃんちゃんこはそもそも袖がないので、褞袍やはんてんとは見た目からして異なります。
まとめ
褞袍とはどんな和服なのか、褞袍の基本情報、歴史や由来、ちゃんちゃんことはんてんとの関連性についてみてきましたが、いかがでしたでしょうか。
はんてん、特に綿入りはんてんと褞袍の区別がよく分からないという方も、褞袍は丈の長い防寒着ではんてんは丈の短い防寒着だということがよく分かったのではないでしょうか。
褞袍は、足元まですっぽり身体を覆いつくしてくれるので、本当に暖かいです。暖房費を節約したいという方や、大寒波に備えたいという方に褞袍は大変お勧めですよ。気になる方はぜひ一度褞袍を試してみてはいかがでしょうか。
