夏の結婚式やお宮参り、祝賀会への招待。和装で出席したいけれど何を着ればいいのかわからず、不安を感じる方が多いのでは。
夏は「薄物(うすもの)」という生地を着る時期です。透け感のある生地のことで、他の季節とはまた違った種類やルールがあります。本記事では、初心者の方でも自信を持って夏のフォーマルを着こなせるよう、時期・種類・マナー、そしてプロが教える具体的な暑さ対策まで徹底解説します。
- 夏用着物の種類と特徴の基礎【絽って?紗とは?】
- 夏のフォーマル用には「絽(ろ)」の訪問着を
- 透け感が美しい「紗(しゃ)」はカジュアルメインにセミフォーマルまで幅広く
- 普段着にはサラリと快適な「麻(あさ)」
- 夏の訪問着、いつから何を着るのが正解?着用時期とルールを解説
- 7月・8月は「薄物(うすもの)」!基本のマナーは?
- 結局、6月~9月は何を着る?薄物と単衣の使い分けまとめ
- 失敗しない!夏の訪問着の選び方とコーディネートのコツ
- 【色彩】視覚的な涼しさを優先したチョイスを
- 【柄(文様)】季節の先取りがルール
- 【小物】夏用の帯と小物の合わせ方
- 夏の着物は暑さ対策必須!汗対策とインナーの合わせ方で快適に過ごす
- 長襦袢と半衿の選び方
- 肌着は透け防止と吸湿性を重視
- 汗対策は入念に!快適グッズを駆使
- 夏の訪問着を守るお手入れを解説!メンテナンスと保管方法
- 手軽に楽しむなら、夏の訪問着はレンタルも賢い選択
夏用着物の種類と特徴の基礎【絽って?紗とは?】

夏の訪問着選びで失敗しないためには、素材ごとの格と特徴を理解しておくことが不可欠です。ひとつずつ紹介します。
夏のフォーマル用には「絽(ろ)」の訪問着を
透け過ぎない上品な夏の代表生地
夏の染め着物、特に訪問着や小紋において最も一般的に使用されるのが「絽(ろ)」の生地です。絽は、平織りと、生地の間にすきまを作るもじり織り(からみ織り)を組み合わせて織られており、生地に規則的な隙間(絽目)ができます。それによる涼やかな見た目と通気性の良さが特徴の生地です。
正絹だけではなく、綿やポリエステルで織られることもあり、帯や羽織、半衿や襦袢など夏の着物では広く使われる生地です。
夏のフォーマル着物は絽の訪問着がベスト
夏の結婚式、披露宴、お宮参りなど、フォーマルシーンで着用すべきは絽の訪問着です。
透けすぎない上品さが特徴で染めの美しさが際立つ絽は、華やかな文様が美しく映えます。程よい絽目の涼やかな見た目は品格と季節感を感じさせる装いになります。
透け感が美しい「紗(しゃ)」はカジュアルメインにセミフォーマルまで幅広く
より透け感が際立つ、サラリとした生地「紗(しゃ)」
「紗(しゃ)」は、もじり織(からみ織)のみで織り上げられた絹織物です。絽と比較すると透け感がより強い生地で、薄くて通気性にも非常に優れています。
通気性が高くハリのあるさらりとした生地感なので、カジュアルな普段着やセミフォーマルから、雅楽の装束まで幅広いシーンで重宝されています。無地のものだけでなく地模様が施された「紋紗(もんしゃ)」といった種類も存在します。
紗はセミフォーマルまでは着用OK!例外もアリ
絽に比べるとややカジュアルな印象になるため、基本的にはお出かけなどの機会がメインの出番になります。上品な色や柄の紗であれば、セミフォーマルなパーティーや観劇、夏の夕涼み会などに着てもマナー違反にはなりません。
ただし、紗でも紋が入った訪問着の場合は準礼装として可能なケースもあります。用途や格式によっては選択肢に入れて問題ありませんので、個別に確認するのがおすすめです。
普段着にはサラリと快適な「麻(あさ)」
夏の気候にピッタリ。暑い日も安心の「麻(あさ)」
夏の普段着として人気なのが、「麻(あさ)」の生地です。吸湿・速乾性に優れており、熱気が逃げやすい特徴から、汗ばむ時期にも快適に着られます。シボとシャリ感ある生地は肌に貼り付かない軽い着心地で、水洗いも可能です。夏の実用着として古くから愛されてきました。
麻は普段着として日常メインに
しかし、訪問着としての格はカジュアル寄りのため、フォーマルな場には向きません。麻は上質な素材として高価な着物も多く作られていますが、格としてはあくまで普段着。夏の贅沢な外出着として楽しみましょう。
夏の訪問着、いつから何を着るのが正解?着用時期とルールを解説

生地と格がわかったら、次は衣替えのルールと気温の変化から、いつ何を着ればいいのかを見ていきましょう。
7月・8月は「薄物(うすもの)」!基本のマナーは?
盛夏となる7月・8月には、裏地がなく透け感のある「薄物(うすもの)」を着用するのが正統なマナーです。薄物とは、絽や紗のこと。織り目に隙間を作って通気性を高めた生地の総称を指します。見た目に清涼感を感じる装いは、夏における最大のおもてなしとなります。
結婚式などフォーマルな場では、盛夏でも袷の訪問着で出席するのも問題ありません。周囲とのバランスや会場の雰囲気に合わせて柔軟に選びましょう。ただし、会場に空調設備があるなど、着用環境の考慮はマストで検討しましょう。
結局、6月~9月は何を着る?薄物と単衣の使い分けまとめ
6月と9月は着物では衣替えの季節にあたります。6月は袷から単衣に、9月は薄物から単衣へと、着る着物の種類を変えるのが基本的なルールです。近年は気温の変化により厳密ではなくなっていますが、基礎としてそのように理解しておくのがベターです。
しかしフォーマルの場では、格のルールに沿った装いをすることがマナーです。そのため、以下のように考えておくとよいでしょう。
- 6月:単衣の訪問着
- 7、8月:絽の訪問着
- 9月:単衣の訪問着
※いずれもフォーマルな場や環境次第で例外あり、各章参照
身内のお宮参りやカジュアルなパーティーのようなセミフォーマルの場面であれば、その日の気温に合わせて柔軟に選択しても問題ありません。
格やルール以外にもポイント!夏着物(薄物)の記念撮影
また、薄物は見た目に涼やかで透け感があり、色合いに透明感が出る着物です。袷の着物に比べるとどうしても全体的に淡い印象になる傾向があります。記念撮影がともなう場で着用する際は、映り方も考慮すると良いですね。
小物の色をワントーンアップしたものでコーディネートしたり、リップやヘアカラーをいつもよりはっきりしたコントラストのものにするだけで、印象がグッと引き締まります。着物以外の要素で補うと清涼感と存在感を両立できるのでおすすめです。
失敗しない!夏の訪問着の選び方とコーディネートのコツ
夏着物は、色彩と文様の組み合わせによって涼を演出するのが醍醐味です。組み合わせのポイントを把握しておくと、ルールも季節も押さえた装いを楽しめます。
【色彩】視覚的な涼しさを優先したチョイスを
夏の訪問着には、水色、薄緑、クリーム、パステルピンク、グレーなど、淡く明るい色が好まれます。これらは見た目に涼しさを感じさせる効果があり、夏の強い日差しの中でも爽やかに映ります。特に、淡く優しい薄紅色の薄乙女色や、薄水色などは、日本人の肌を明るく見せつつ、涼しげな印象を与えるのでおすすめです。
【柄(文様)】季節の先取りがルール
和装では季節を半歩先取りすることが粋とされます。8月の猛暑であっても、萩、撫子、桔梗、ススキといった秋草を描いた柄を選ぶことで、秋の気配を演出し、見る人に涼を届けます。
また、波頭、流水、千鳥、貝桶といった、水を連想させる柄も夏の定番なので、積極的に取り入れるとよいでしょう。
【小物】夏用の帯と小物の合わせ方
訪問着が夏物であれば、帯も必ず夏帯(絽や紗の袋帯)を合わせるのがルールです。帯揚げは絽や紗の素材、帯締めもレース組みなど、透け感のある夏専用のものを選びます。
冬用の重厚な小物を使うと、全体のバランスが崩れるだけでなくマナー違反と見なされますので、注意して選びましょう。
夏の着物は暑さ対策必須!汗対策とインナーの合わせ方で快適に過ごす

近年どんどん厳しくなる夏の暑さ。着物は暑いというイメージがありますが、どうしてもまとう布の量が洋服よりも多くなる分、対策は必須です。カギになる、見えない部分の工夫をご紹介します。
長襦袢と半衿の選び方
夏の訪問着の下には、必ず絽の長襦袢を着用しましょう。通気性に優れた布を選ぶことで対策できます。
素材はさらりと着やすい麻がおすすめですが、最近はクール素材のものも作られています。他にも、吸汗性に優れた正絹のほか、自宅で洗えるポリエステルも人気です。二部式の長襦袢は腰の切り替えが透けて見えることがあるため、フォーマルでは一部式が推奨されます。
半衿も長襦袢に合わせた絽の素材を使い、手首や首元から覗く部分も夏仕様に統一します。
肌着は透け防止と吸湿性を重視
薄物は日差しの中にいると脚のラインが透けます。これを防ぐために、一部式の長襦袢を着用するか、下半身には和装用のステテコを履くのが賢明です。
ステテコは透け防止対策はもちろん、汗による生地の張り付きを防いで汗を吸ってくれるため、一枚足して暑くなるように思いますが、意外にも軽やかに着られるアイテムです。
汗対策は入念に!快適グッズを駆使
- 補正をガーゼに変える
通常はタオルを入れるところを、ガーゼに変えてみましょう。タオルは意外にも熱が籠もります。通気性の良いガーゼを重ねることで、吸汗性と放熱性を両立できます。 - 制汗剤とベビーパウダー
着付け前に、脇や膝裏など汗をかきやすい場所に制汗剤を、首元にはベビーパウダーをはたいておくと、肌と生地の摩擦が減り、ベタつきを抑えられます。 - 着付けは空調の効いた部屋で
着付け中は意外と身体が温まります。ここで発汗してしまうと後の汗を呼びますし、着付けにも悪影響です。室内を十分過ぎるほど冷やしてから準備を始めることが基本です。 - 扇子や保冷剤など、グッズを活用
扇子やミニ扇風機を持ち歩き、汗をかきはじめた場所に風を当てるだけでずいぶん気持ちよく過ごせます。また保冷剤を持ち歩いて首筋などに当てて過ごすのもおすすめです。日傘や飲料を持ち歩くなど、熱中症を防ぐためにも対策は抜かりなく。
夏の訪問着を守るお手入れを解説!メンテナンスと保管方法

汗をかく夏に着る訪問着は、着用後のお手入れが寿命を左右します。保管までに注意すべきことを解説します。
- 着用直後のセルフケア
脱いだ着物はすぐに畳まず、着物ハンガーにかけて数時間〜一晩、直射日光の当たらない室内で陰干しをして体温と湿気を取り除きます。帯や長襦袢も同様に干して、湿気を完全に飛ばしてから収納します。
- 汗抜きクリーニングの重要性
見た目に汚れがなくても、夏の着物は大量の汗を吸っています。汗は時間が経つと黄変(おうへん)という落ちにくいシミやカビの原因になります。シーズン終わりには、必ず汗抜きを指定して専門のクリーニング店に依頼しましょう。
- 保管の注意点
通気性の良い場所に保管し、湿気管理を徹底します。直射日光は色あせの原因となるため、光の当たらない場所を選びましょう。除湿剤や乾燥剤を利用して、カビの発生を防ぐことが長持ちさせる秘訣です。
手軽に楽しむなら、夏の訪問着はレンタルも賢い選択
夏の訪問着は着用期間が年間で2ヶ月程度と短く、高価な正絹を手入れし続けるのはハードルが高いと感じる方も多いでしょう。
京都きもの市場の宅配レンタルサービスなら、季節に合わせた絽や紗の訪問着を豊富に取り揃えています。夏帯、絽の長襦袢、草履、バッグまで全てが揃ったフルセットでお届けするため、ご自身で小物を用意する手間もありません。毎回違うものを着られる楽しみも残しておけますね。そして返却時のクリーニングは不要です。汗を気にせずに大切な一日を過ごせます。
夏の訪問着は、日本の夏を涼やかに過ごす優雅な礼装です。時期に合わせた素材選びと賢い汗対策さえ知っておけば、暑さを恐れる必要はありません。ぜひ凛とした着物姿で大切な時間を彩ってください。
